『ラオスにいったい何があるというんですか? 紀行文集』(村上春樹)

仕事を辞めた、この前の年末年始にラオスに行っていました。
と言っても、メインはカンボジアとベトナムですが・・・

だから、というわけではないんですが、遅ればせながらこの本を読みました。
と言っても、ラオス紀行は、いくつかある旅行記の中の一篇に過ぎないんですが。

村上春樹と言えば、『騎士団長殺し』が、発刊されて、話題になっています。

でも、僕は話題になっている時には読まない主義なんです。
そんなわけで、旧作で未読の作品を読んでいる次第。

本書は、村上春樹が各誌に寄稿した紀行文(って駄洒落じゃないよ!)に加筆訂正を加えて、一冊の本にしたもの。
メインとなるのが、JALのファーストクラスの会員誌の『アゴラ』の記事。

そういえば、昔JALのクレジットカードの会員だった頃に届いていて、村上春樹のこの連載も読んだことあります。
マイルを貯めるために、上級のカードに入っていたんですけど、他にもっと還元率の良いカードに乗り換えました。
ステイタスのために年会費を払うのはもったいないので。

それはさておき、出版不況の中、旅行記はさらに成立しがたい分野になっているようですね。
誰でも気軽に海外旅行に行けるようになっている一方で、若い人を中心に旅をしなくなっている。
沢木耕太郎が『深夜特急』を書いたところは、「世界中を旅する」というのは若者の憧れだったし、自分が旅しようがしまいが、旅人の文章を読むことは、未知の世界に踏み入るスリリングな体験でした。

いまや、活字を読む人が減っているのに加えて、他人の旅のことなんて知りたくない・・・という状況。

そんな中でも、村上春樹であれば、旅行記は売れてしまうんですね。
村上春樹は、危険を冒して未踏の地に挑んでいるわけでも、人ができないようスリリングな体験をしているわけでもない。
司馬遼太郎のように、その地に関して、知られざる知識や情報を掘り起こしているわけでもない。

逆に、それだからこそ、読者としても、旅を日常の延長線上として、も肩ひじ張らずに、すっと入っていくことができるんでしょうね。
村上春樹の紀行文は、旅先のことを書きつつ、それと交錯する自分の内面を書いている。
内省的と言えば内省的なんですけど、昔の旅人みたいに、自分に酔っている感じもない。
そういう自然さが、非常に現代的であり、しかも現代人の完成にフィットしているんでしょうねえ。

子供のころ、国語の授業で「ですます調と、だである調の文章を混在させてはならない」と習ったけど、このノーベル文学賞候補(と言われる)作家は、これを多用しているんですよね。

僕はハルキストではないし、村上春樹の文体はしばらく馴染めなかったんですけど、10年くらい前からスッと入ってくるようになっています。

本書では、同じ場所を再訪する話が多いのですが、その当時に執筆していた小説のことが書かれていたりして、作品誕生の秘密(と書くと大げさですが)の片鱗が伺えたりして、ハルキストには堪らないところもあると思います。


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