奥田英朗は、直木賞を受賞した『空中ブランコ』を読み、シリーズを遡って『インザプール』を読んで・・・みたいなところからはじめて、ポツポツ読んでいました。

特別好きな作家ではないのですが、奥田氏の連絡短編は遠出をするときのお供に良いんですよね。

で、今回は『東京物語』を読みました。

結構古くて、上記の2冊よりも前に書かれた本です。

1978年4月。18歳の久雄は、エリック・クラプトンもトム・ウェイツも素通りする退屈な町を飛び出し、上京する。キャンディーズ解散、ジョン・レノン殺害、幻の名古屋オリンピック、ベルリンの壁崩壊…。バブル景気に向かう時代の波にもまれ、戸惑いながらも少しずつ大人になっていく久雄。80年代の東京を舞台に、誰もが通り過ぎてきた「あの頃」を鮮やかに描きだす、まぶしい青春グラフィティ。

奥田氏は僕よりも10歳以上も年上ですが、たしかに、その時代に東京に上京して、青春時代を過ごした若者が鮮やかに描かれています。
中心は学生時代よりも社会人になってから数年なんですよね。
たしかに、モラトリアム時代である現代では、社会人になって数年間は青春時代と言っても良いんですよね。
世はバブルですが、バブルが社会があからさまに書かれているのは、連絡短編の一作のみです。

主人公の職業はコピーライター(著者の前職と同じ)ですが、イケイケ感はあまりなく、等身大に描かれています。

ちなみに、僕の青春時代とはちょっとずれているので、僕自身がリアルに分かるのは、80年代後半くらいからですね。
ゴーストバスターズとか、ワム!とか、そういう時代です。
そんなヒットアイテムが背景にたくさん出てくるので、同時代の人たちは懐かしく、共感を覚えるところが多々あるんでしょうねえ。

あまり重くならずに、自分の青春時代と重ねつつ、気軽に呼んで楽しめる小説です。

奥田英朗って、50代男という、あまり小説のターゲットにならないセグメントを捉える事の出来る稀有な存在だなあ・・・と本書を読んで思いました。

面白いんですけど、彼の本領は「変人」を面白く描くところにあると思います。
主人公の久雄も、脇役の人たちも、変人ではないので、『インザプール』『空中ブランコ』と比べると、パンチに欠けるきらいはありますね。

そういう点では、あまり知られていない『サウスバウンド』が、奥田英朗作品の中では、僕の一番のお気に入りだったりします。


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