「ヴェネツィア・ルネサンスの巨匠たち」のレビューは書きましたが、時間が取れず、十分な予習ができませんでした。

「ヴェネツィア・ルネサンスの巨匠たち」@国立新美術館はダークホース的な展覧会

そのかわり、復習しています。

『ヴェネツィア 美の都の一千年』(岩波新書)を読みました。

Amazonのレビューは少ないながらも、極めて評価が高いです。

実際読んでみましたが、評価にたがわない良書で、感動を覚えました。
有能な専門家が、一般読者向けに分かりやすく、丁寧に専門領域を解説するという、新書の王道を行っています。
ただ、いまは邪道の方が幅を利かせてしまっていますがね。

いまは新書バブルと言ってよいほど、新書が乱造されています。
レベルは玉石混交ですが、「石」の方が多いんですよね。

僕の高校生の頃は、岩波新書、中公新書、講談社現代新書が三大新書と呼ばれていました。
中でも、岩波新書はレベルが高いことで知られていました。
左翼臭が強すぎて読むに堪えないものも確かにあるのですが、アカデミックなテーマのものは、たしかに良書が多かったですね。
いまは、だいぶ俗化してしまったようですが。

そんな中で、本書は古き良き岩波新書を彷彿させる良書でした。

ページの要所要所にカラー写真が挿入されていて、それを本文中で対応しながら語っています。
非常に丁寧に作られているし、解説も要領を得ていて勉強になります。
良い教師の授業を受けているような、そんな気分になる本です。

そもそも、ヴェネツィアルネサンスって、日本人にとってイマイチ分かりにくいんですよね。
美術に関心高い人はさておき、そうでない人は、ティツィアーノ、ヴェロネーゼ、ティントレットとか言われてもピンとこないと思います。
レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエロというビッグネームと比べると、ちょっと小粒な感じがするし、日本人にとっては、その良さもやや分かりにくい。

本書を読めば、ヴェネツィアの歴史の中から、それぞれの芸術家がどのように位置づけられ、どのような役割を担ってきたかがわかります。
歴史的特性、地理的特性を踏まえつつ、そこで培われた精神がいかに芸術として体現されたのか、という点がコンパクトにまとめられています。

たいした知識も教養もない人のインタビューを書き起こしただけような新書、ブログを編集して出版しただけのような新書も多々ある中、こういう、知識人が丁寧に綴った新書がいまでも世に出ているのは喜ばしいことです。
インターネット時代だからこそ、逆にこういう本が求められると思うんですよ。


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