今朝書いた、『論文捏造』(中公新書ラクレ) のレビューの続き。

小保方さんの手記の代わりに『論文捏造』を読む

ここで扱われているシェーン事件は、2002年に発覚した論文捏造事件です。
シェーンはドイツ人で、アメリカの『ベル研究所』に所属、超伝導の実験で華々しい成果を上げます。
一時はノーベル賞も確実と言われていました。
ところが、不正が発覚して、彼の名声は地に落ちます。

この事件、STAP細胞事件と非常に似ています。
・シェーンは若干30歳(小保方さんと同じ)にして、華々しい成果を上げた
・彼は最先端の研究所(ベル研究所)に所属していた
・研究予算の獲得競争が激しく、成果を焦ったことが、論文捏造につながった
・大学院時代にも、論文の捏造をやっていた
・論文を掲載する専門誌のチェックが甘く、不正を見抜けなった(STAP細胞の論文が掲載された「ネイチャー」も含まれる)
・大御所研究者(バートラム・バトログ)が論文の共著者に名を連ねており、その権威があったため不正の発覚が遅れた
・捏造の際には、過去データの使いまわし、改ざんを行っていた
・実験の記録が不完全だった上に、彼が作成したサンプルも残っていなかった
・嫌疑が掛けられた際に、シェーンは様々な理由を付けて責任を回避しようとした
etc.

驚くほど似ているんですよね。

あと、シェーンは捏造を行ったことは認めつつも、自身の研究成果に関しては撤回はしていない。
おそらく、彼は自分の研究成果は間違いはなかったと考えているのではないか。
小保方さんの真意はわかりませんが、おそらくシェーンと同様ではなないかと思います。

一方で、異なるところもあります。
・シェーンはおとなしく、(表向きには)目立つことを嫌う研究者だった
・シェーン事件は、3年間発覚せず、彼の成果に基づいて多くの研究が行われた
・シェーン事件では、大御所研究者(バートラム・バトログ)は研究者として留まり続けている(笹井さんが自殺したのは対照的)
・シェーンがベル研を解雇されてから、メディアや学会とはかかわらず、ドイツの地元に戻って中小企業で働いている

本書では、論文捏造を回避するための処方箋をいくつか提示しています
・(若手研究者の)上司は、部下に対して管理責任を徹底すべき
・論文掲載の際にレフェリーがチェックを周到にすべき
・研究機関は短期的な成果を求めるべきではないし、それによって予算配分を決めるべきではない
etc.

まさに、STAP細胞事件でも、同様の弊害が論文捏造に導いてしまったんですよね。
その意味では、自然科学の学会は、シェーン事件と同じ問題を引きずっていると言って良いと思います。

同じ間違いは、延々と繰り返されるんだな・・・と思いました。

本書の取材の元となった番組は、NHKのBS放送で放映されたようです。
ウチはBS放送は映らないので、見ていません。
STAP細胞事件が起きた際に、この番組を地上波で再放送して欲しかったと思いますね。

あと、ES細胞の論文捏造事件は、日本のメディアにも大きく取り上げられましたが、シェーン事件はあまり大きくは取り上げられてなかったし、ES細胞事件ほど話題にもなっていませんでした。
ES細胞よりは、こちらの方がはるかに重大かつ深刻な事件であるにも関わらず。
やはり、一部の日本人が嫌う、韓国で起きた事件だったというのが大きいんでしょうね。

世間の関心は、概して「科学的」ではありませんね。
まあ、小保方さんが、若くて(理系の研究者にしては)外見も良かったことが、世間の関心を引いた、というのは多分にありますよね。
小保方さんが、中年の冴えない研究者だったりしたら、これほどメディアでは話題にならなかったと思います。

いずれにしても、『論文捏造』は良書です!!


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください