会社を辞めて、自由時間が増えたので、映画やドラマを観る時間が増えたのに加えて、原作小説も読む時間が取れるようになりました。

本当は、原作を先に読んでから、映画やドラマを観る方が良い(小説を読むときに、映像に引っ張られず、自分の視点で読めるから)んですが、小説を読むのは時間も精神力も必要なので、なかなかできません。

『半沢直樹』シリーズはドラマ→原作という順番を取ってますが、本作に限ってみると、こっちの順番の方が面白さの相乗効果は高まるかなあ……と思います。

そんなわけで、ドラマで該当部分が終了した『ロスジェネの逆襲』を読みました(現在放送中なのは、『銀翼のイカロス』)。

小説とドラマは大筋は一致しているんですが、結構ドラマ独自で工夫されているところもたくさんありますね。
質の高い映像作品って、原作は尊重しつつも、原作にはない映像ならではのプラスアルファが加わっているものだし、逆にそうならないと、原作を超える作品にはなれないと思いますね。

まず、原作の方では、宿敵の大和田や、金融庁調査官の黒崎は『ロスジェネの逆襲』には出てきません。

小説では、大和田の役割を果たす別の登場人物が出てきます。
黒崎が出てくるシーンは、小説ではゴッソリ抜けています。

ドラマでは、あまりに自然に彼らが入ってくるので、まったく違和感はありませんし、彼らの登場によって、前作との継続性が強まっているし、ドラマに厚みも出てきています。
何よりも、人気キャラが登場することで、視聴率も稼げるでしょうしねえ。

本当に、脚本が良く練られているなあ……と感心してしまいます。

黒崎にパスワードを破られて秘密資料を見られかけるシーンは「設定が雑すぎる/古すぎる」という批判もあったようですが……
たしかに突っ込みどころはあったけど、スリリングだったし、このドラマ自体が時代劇みたいなものなんで、許容はできましたけどね。

小説では、登場人物が多くて、キャラクターが立ってない人は、あまり印象に残らないんですが、ドラマの方は俳優さんがしっかりキャラづくりをしているので、原作の不完全性を補っているところもあります。

小説の方だと、伊佐山なんかはドラマほど存在感がないし、キャラもあまりたってない感じですが、ドラマは市川猿之助がしっかり演じていて、インパクトが十分にありますね。

小説はタイトル通り、「ロスジェネ世代の逆襲劇」というしきさいが強いんですよね。

森山雅弘(賀来賢人)は小説もドラマも結構存在感はあるし、キャラクターも一致していますが、東京スパイラルの社長の瀬名洋介と、電脳雑伎集団の社長 平山一正はドラマでは小説と比べると存在感が薄いですね。

全シリーズからの、東京中央銀行の面々や、黒崎検査官が目立った反動もあると思いますが。

原作では、瀬名(ロスジェネ世代)と平山(バブル世代)の対立という構図がもっと前面に出ていて、それぞれの経営者としての性格や資質の違いももう少し突っ込んで描かれていました。

限られた時間のドラマではそこまで書ききれなかったようですし、むしろ東京中央銀行内の対立や派閥争いが付け食われることで、「バブル世代以上の物語」が中核になっていたように見受けられます。

まあ、前作のドラマが大ヒットしているだけに、ドラマでは、ターゲットとする視聴者も作品の世界観も、できるだけ前作を踏襲することを重視したんでしょうね。

原作を読むと、改めて「原作をいかに面白く映像作品として仕立てるか?」というところを、ドラマ化する際にものすごく考えて趣向を凝らしていることがわかります。

池井戸潤さんは、物語の構成力、広く現代人の共感を呼ぶようなテーマ設定という点で、かなり優れた作家だとは思いますが、描写力や表現力が巧みな方ではないんですよね(特に初期)。

逆に言えば、「映像映えしやすい原作を書ける人」とも言えます。

だからこそ、池井戸作品は多数映像化されているんだろうなあ……と思います。

どちらか一方でも楽しめますが、『半沢直樹』シリーズはドラマと小説と両方に接して、それぞれの違いを見つつ、それぞれどこが工夫されているのか?というところを見ていくと、かなり勉強になります。

小説は新作も出ましたが、ドラマ化を待つか、先に読むか、迷うところです。


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