一日遅れのレビューになりますが、『仮名手本忠臣蔵』第3部。
過去記事は下記を参照ください。
第3部は下記の通り。
八段目 道行旅路の嫁入
九段目 山科閑居の場
十段目 天川屋義平内の場
十一段目 高家表門討入りの場
同 広間の場
同 奥庭泉水の場
同 柴部屋本懐焼香の場
同 花水橋引揚げの場
何と言っても、最後の討ち入りがクライマックスです。
でも、実際の赤穂事件って、ほとんど戦闘はやってないんですよね。
寝込みを襲ったから、ほとんど切り合いにはならず、浪士の圧勝だったそうです。
あっさり勝ってしまうと、味気ないので、激しい大立ち回りが演じられますが。
歌舞伎の大立ち回りって、様式美の世界であって、現代から見るとあまりスリリングとは言えません。
ただ、今回の公演では、アクションにはスピード感があって、結構スリリングでした。
時代に合わせて演出も変えていると思います。
仮名手本忠臣蔵の主役は大星由良之助(大石内蔵助)、あるいは四十六人の浪士だと思いがちですが、討ち入りに関わるそれぞれの人がみな主役なんですよね。
群像劇とも言えますけど、仇討という一つのうねりがあって、そこに人々が配置されていると見ることもできます。
優れた「フィクション」ではありますけど、それが大当たりしてしまったことで、多くの人の歴史観がゆがめられてしまっているのもまた事実です。
吉良上野介をはじめ、本作品によって風評被害にあった人も多いんですよね。
現代人は、虚構と史実の両方を踏まえたうえで、虚構の世界を楽しむのが良いと思います。
いずれにしても、国立劇場五〇周年にふさわしい企画だったと思います。