婚約者の友人

桜坂劇場で『婚約者の友人』を観てきました。

評判にたがわず、とても良い作品でしたよ。

フランソワ・オゾンというフランス人の監督の作品。
世界的に見ると、いまはアメリカ映画が世界を席巻していて、ヨーロッパ映画は以前の栄華はありませんねえ。
第2次世界大戦後はアメリカが世界の主導権を握っており、映画産業もそうなっていると思うんですが、それでも1970年代くらいまでは、ヨーロッパ映画は輝いていたと思います。
もちろん、その後も良作はたくさん出てますけど、産業としてはアメリカに完全に持って行かれてます。

桜坂劇場がヨーロッパ映画が好きなのもあるでしょうが、最近のヨーロッパ映画は良作が多いと思いますよ。
ハリウッド映画も、エンタメ重視ではありつつ、深みのある作品が出ていて、映画産業の風景が変わりつつある気がします。

さて、『婚約者の友人』ですが、舞台が第一次大戦直後ということもあるし、テーマや撮影手法もあると思いますが、ヨーロッパの古典的な映画の風格を持った作品に仕上がってますね。

第一次大戦終戦後、戦争で婚約者のフランツを失った、ドイツ人のアンナ(パウラ・ベーア)は、婚約者の両親と暮らしている。
アドリアン(ピエール・ニネ)と名乗るフランス人が訪ねてくる。
このアドリアンは、フランツが戦前パリに留学していたときの友人とのことで、フランツとの思い出を語りはじめる。
アンナがアドリアンと関わりあう中、過去の秘密が徐々に明らかになっていく・・・

ちょっとミステリータッチなストーリー展開です。

*** ネタバレ注意! ***

ただ、謎と言っても、それほど入り組んだものではないですね。
ハリウッド映画に慣れていると、「ひねりが足りなんじゃない?」「もっと工夫したら?」と思いますが、あくまで本作は芸術作品であり、人間ドラマですから、これで良いと思います。
ちなみに、監督が同性愛者なんだそうですが、「アドリアンとフランツは同性愛だった」というオチかになるかと思っていたんですが、違いました・・・

で、アンナとアドリアンは恋愛関係に至ります。
「こりゃ、どう考えてもうまく行かないだろう」という状況にあります。
最後に、駅での別れのシーンがあります。

こういうシーンは映画では良くあるのですが、『昼下がりの情事』なんかと比べてみると、ラストシーンの処理の仕方の違いが良く分かります。

昔のハリウッド映画は悲恋に終わる作品も多かったと思うんですけど、最近は少なくなってきた気がします。

『タイタニック』なんかは悲恋に終わるんですけど、ラストシーンに余計な非現実のシーンを挿入したりして、観客に媚びてしまうんですよね。
ちょっとこういう演出はあまり好きじゃないんですが。

で、本作はエンディングが素晴らしいですね。
アンナとアドリアンの別れの後、最後に非現実のシーンが挿入されますが、『タイタニック』とは逆で、観客を惑わせるシーンになってます。
最後にアンナがどうなったのか?
明示せずに余韻を残して終わりますが、僕としてはこれが良いと思います。

しかし、本作で象徴的な意味を持つ、マネの絵の解釈が難しいですね。

・フランツとアドリアンは親友ではなく、戦地で鉢合わせた敵同士
・フランツを殺したのはアドリアン
・アドリアンは罪を償うためにアンナを訪れた
・アンナはアドリアンと別れたあと、フランツの実家にも戻らず、新しい人生を歩んだ

というのが順当な解釈かもしれません。

でも、マネの絵のせいで、下記のような解釈もできなくないんですよね。
・フランツとアドリアンは親友(あるいは恋人同士)だったが、2人の間に深い溝を生む何かがあった。
・フランツの死因は自殺
・アンナもアドリアンと別れたあと自殺する

まあ、順当な解釈の方を妥当としつつ、別の可能性も担保しつつ、結論は出す必要はないとは思います。

原作のタイトルは「Franz(フランツ)」ですが、フランツの存在は、登場人物のその後の人生を決定づけてはいるけど、回想シーンにしか出てきません。
キーパーソンが不在で、周辺でドラマが展開するという手法は良くありますが、本作もそれをうまく使っていますねえ。

あと、アンナ役のパウラ・ベーアは「すごい美人!」と言うほどでもないですが、目力があって、演技力も高くて、魅力的な女優さんだと思います。

やっぱり僕は、アメリ映画よりもヨーロッパ映画の方が好きなのかも。


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