ハイドリヒを撃て!

映画はたくさん観てますけど、レビューはさぼってきました。
どうしても、PVが少ないので、後回しになってしまいます・・・

さて、桜坂劇場で観た『ハイドリヒを撃て!「ナチの野獣」暗殺作戦』のレビューです。
単館系で、あまりメジャーな映画ではないと思いますけど、良作との評判が高い作品です。

さて、この映画は、ヒトラー、ヒムラーに次ぐナンバー3のナチス高官ラインハルト・ハイドリヒの暗殺計画、およびその後を描いたものです。
題材も、ヒトラー自身を対象にしていなくて、地味ですねえ。

ただ、このハイドリヒというのは、ユダヤ人殲滅を主導した男です。
舞台はチェコで、セリフは英語がメインとなります。
歴史が分かってないと(僕も映画観るまで分かってなかったんですが)、背景が良く分かりません。
チェコはナチスドイツに占領されていて、暗殺部隊は、イギリス政府とチェコスロバキア亡命政府が送り込んだものなんですね。

この映画が「さすが!」と思うのは、ハリウッド映画のような派手なアクションシーンはないながら、凄く緊張感があるんですよね。
7人の暗殺舞台が、いかにナチスの目が光る中で暗殺計画を実行していくのか?
というところが、前半のキモになります。

ただ、この映画の真骨頂は、暗殺計画が成功した後を描いた後半にあります。
「暗殺が成功した。バンザイ!」でメデタシメデタシで、終わったりはしません。

当然のことながら、暗殺者とその協力者はナチスに激しく追跡されます。
それだけではなく、チェコスロバキアの市民も激しい報復に会います。

極悪人の暗殺という英雄的な行為が、恐ろしい悲劇を招いてしまう。
そこに、暗殺者の葛藤もあるんですよね。

ハリウッド映画にあるようなスカッとした感じは全然ないし、ナチスの暴虐シーンはじめ、目を背けたくなるような場面も多いし、最後まで暗いです。
ドキュメンタリー風の映画でありながら、ラストシーンが凄く幻想的で美しいんですよね。
この、悲惨ながらも美しいラストシーンは『蜘蛛女のキス』を彷彿させる素晴らしさでした。

あと、英雄的な精神がもたらす悲惨さを描いた先達として、チェコのお隣のポーランドの巨匠アンジェイワイダがいますが、主題はアンジェイワイダを彷彿とさせるところもあります。

『帰ってきたヒトラー』は、ヒトラーが現代にタイムスリップしてくるという、荒唐無稽な設定のコメディーですが、裏側ではネオナチの台頭や移民排斥運動に警鐘を鳴らす、現代ヨーロッパの病理を抉る作品です。

『ハンナアーレント』は、なぜホロコーストが起きたのか? という哲学的なテーマを、アイヒマン裁判を傍聴した女性哲学者の視点から描いたノンフィクション映画。

ナチスドイツは現代人にとっても、いまだに重要な題材なんですよね。

で、『ハイドリヒを撃て!』はどちらかというと、新しいタイプの映画というよりは、古典的な風格を持った正統派の映画だと思います。
ハイドリヒ暗殺計画という、過去の歴史を題材にしてますが、しっかりと人間の普遍性に迫ってきています。
そういう意味でも、正統派の歴史映画と言ってよいかもしれません。


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