BSプレミアムで『ニッポン無責任時代』をやっていました。

いま観ても十分面白い!

というのは事実ですが、黒澤や小津の作品のように、普遍的な価値を持つ名作とはちょっと毛色が違います。

古臭いところは多々あるけど、時代性が伺えて、そこが面白いところですね。
あと、人間の欲望の本質がきっちり抑えられているので、描かれている設定は古くても、骨子は今でも通用するんですね。

主人公は、植木仁が演じる平均(たいらひとし)という男。
名前とは違って、普通の人からズレた変わり者なんですね。
競馬で会社をクビになり、たまたまバーで聞きつけた情報を元に、洋酒会社の社長に近づき、取り入ってトントン拍子に出世して・・・
みたいなストーリー。

主人公の適当なウソにみんな簡単に騙され、あまりにも都合よく上手く行きすぎて、ちょっとどうかなあ・・・と思うところは多々あります。
まあ、コメディ映画だし、この時代は今よりおおらかだったんでしょうね。

しかし、主人公もそうですが、偉い人たちのコンプライアンス意識のなさというのはスゴイです。
飲酒運転して警察に捕まったらウソついてごまかすわ、賄賂は渡すわ、経費で芸者揚げてどんちゃん騒ぎはするわ・・・
社長は社長で、経営者としての役割を果たしているようには見えません。
社長室ではゴルフの練習したり、夜は飲み歩いていたり。

この映画、1962年の制作でだから、東京五輪の2年前なんですね。
ロッキード事件の14年前です。
それ以降、企業の不祥事が取りざたされて、どんどんコンプライアンス意識が高まっていきましたので、隔世の感があります。

さておき、主人公の平均は、毎日遅刻するし、とても真面目に働いているようには見えないです。
でも、うまく社長に取り入って、買収を回避したり、動くべきところではしっかり動くんですよね。

努力はしないけど、要領と才能と運には恵まれていた逸材とも言えます。

「日本人は勤勉だ」と言われます。
実際、勤勉だとは思いますが、その反動としてこういう映画がつくられたりするし、三年寝太郎とかものぐさ太郎みたいな伝承もあったりする。
コツコツは働かないけど、才覚で富をもたらすということには、必ずしも否定的ではなかったと思います。

僕の知っている人にも、ここまで極端ではないけど、似たタイプの人がいます。。
社長秘書とか、役員秘書とか、経営者に近いところにいて、うまく立ち回って気に入られる。
普段は地道に働きはしないけど、会社が危機の時や、大きな経営判断を要するタイミングで、きっちり存在感を示す。
それが認められて、引き上げられて出世する。

反面、現場で地を這うようにして仕事を取ってきている営業なんかからすると、こういう人が自分たちを飛び越して出世することには忸怩たるものがあったりもします。
でも、現場でどんなにコツコツ頑張ったところで、経営者としての能力は培われないんですよね。

普段はいい加減でも、経営者の資質があり、それをうまく活かすことができれば、成功してしまうんですよね。
こういう人は、他人から恨みを買って、足元をすくわれてしまうことも多いですけどね。

僕は、この映画は「いい加減な男が要領よく立ち回って出世する」というだけの話ではなく、サラリーマン的な真面目な大半の人々と、経営者的ないい加減な少数な人との対峙を描いた作品として観ました。


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