マンチェスターバイザシー

2017年のアカデミー作品賞は『ムーンライト』でした。
本作が傑出して優れているとは思わないし、他の候補作品も優れたものが多いですが、決め手に欠ける感はあります。
『ラ・ラ・ランド』にしても、世の中の評価ほどには、僕個人としては評価していません(良作であることは間違いないんですが)。

『ムーンライト』はアカデミー作品賞に値するか?(1120本目

技巧に走り過ぎた感ある『ラ・ラ・ランド』(1101本目)

さて、今回は『マンチェスター・バイ・ザ・シー』を観てきました。
日本で上映されている2016年アカデミー作品賞候補で唯一未見の作品です。

映画好きの友人は「2017年上半期に観た作品NO1」と言っていました。

作品は、かなり地味で、最初は「退屈な映画だなあ・・・」と思いました。

☆☆ ネタバレあり ☆☆

主人公のリー・チャンドラーはボストンの住宅街で便利屋として生計を立てています。
腕は良いんですが、人間性に問題があって、お客さんとうまくやれなくて、世捨て人みたいな生活を送っている。
そんな中、兄のジョーが心臓発作で亡くなったとの連絡を受けて実家に帰る。
リーは、ジョーが自分の16歳の息子を後見人に決めていたことを知らされ・・・というストーリー。

ちなみに、「マンチェスター・バイ・ザ・シー」というのは、物語の舞台になる主人公の地元の名前で、実在します。
タイトルだけ見ると「イギリス映画かな?」なんて思ってしまいます。
まあ、この辺のエリアは、昔はニューイングランドと呼ばれていて、最初にイギリスが入植した場所ですからね。
風景もヨーロッパ風の港町で、良い雰囲気なんですよね。
景勝地を舞台にした映画は、観光ビデオのように美しく撮影されてますが、本作では、天気は雪だったり、曇りだったりして、リアリティを重視している感じです。

ストーリーに話を戻しましょう。
後継人としてのリーと、甥のランディとの交流が物語の核となるわけですが・・・

気難しい男が、少年との交流によって、人間性を取り戻す。
みたいなストーリーでしたら、ありがちで、心温まる気持ちにはなっても、ありきたりの映画になったと思います。

ところが、この中には、もうひとつサブストーリーがあるんですよね。
リーの過去です。
リーがどうして人間嫌いになって、世捨て人のような生活を送っているかが、過去の回想で明らかになっていきます。

さらに、なぜ弟が自分の息子の後見人にリーを選んだのかということも、過去との関連で明らかになってくる。
ここから現在と過去が繋がって、感動の物語が紡ぎだされていきます。

とても良く出来た物語だなあ・・・と感心させられます。
ただ、作品は淡々と進むので、作為的なところは表に出ておらず、裏側でしっかり計算して作られている感じです。

本作はアカデミー作品賞こそ逃したものの、脚本賞と主演男優賞を受賞しています。
この2賞の受賞に関しては、全く異存はないですね。

こういう、表向きは淡々と物語が進んでいくが、裏側には人々の熱い葛藤が隠れている・・・みたいな作品って、アメリカ映画にはほとんどないと思っていました。
逆に、本作を観て、アメリカ映画の幅の広さを感じさせられた次第です。


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