人生フルーツ

『人生フルーツ』

東京にいたら見なかったであろうこの映画。
こちらの桜坂劇場でリバイバル上映してたので、行ってきました。

桜坂劇場は、映画のセレクトショップみたいな映画館で、ここが選んだ作品は信頼できるんですよね。
東京もそういう映画館はありますけど、いかんせん上映作品数が多すぎて目移りしてしまいます。

さて、本作品は愛知県のニュータウンの一角の平屋で暮らす老夫婦を追ったドキュメンタリー。
夫の修一さんは90歳で元建築家。
自身が設計を任された高蔵寺ニュータウンに87歳の奥さんで暮らしているわけですが、夫婦で雑木林を醸成して、野菜や果物を育てながら生活している。

足りないものは買っているので、自給自足とは言えません。

たしかに、現代人としては珍しい生き方ではあるけど、もっと刺激的な生き方、変わった生き方をしている人はたくさんいると思います。

でも、本作が素晴らしいところは、実現できそうで、なかなかできない理想の生活をこの夫婦が送っているからだと思いますね。
ここまで仲が良い夫婦は少数派だと思うし、ここまで日常生活の雑事を丁寧にこなす夫婦も珍しいと思う。
贅沢をしているわけではないけど、豊かな生活を送っています。
これからの時代、こういう生活を送るのは色々な意味で難しくなっていくでしょうね。

映画自体は淡々としているし、樹木希林ナレーションも抑制が効いていて、過剰なところがない。
スッキリしていてミニマムな作風ながらも、ひとつひとつの映像が丁寧に作られている。
まさに、主人公の夫婦のライフスタイルにぴったり寄り添った作風に仕上がっています。

こんな生き方はなかなかできないし、特に老後になってここまで元気で、マメな生活を送るのはほぼ不可能に近い気がするなあ。
日常生活が綴られていながらも、それは奇跡的なバランスによって成り立っている世界だと思う。

最後の方に夫の修一さんが亡くなるのですが、昼寝をしたまま目覚めないという往生。
死に方までも理想的です。

一人残された妻の英子さんも、夫の遺影に毎日お供えしながらも淡々と生き続ける。
この当たり前のように過ぎていくかに見える淡々とした日々が、かけがえなく、貴重なものであることがヒシヒシと伝わってきます。

ドキュメンタリー映画の中でも一級品と言える作品です。


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