映画レビューです。
『キングコング 髑髏島の巨神』

キングコング髑髏島の巨神

予告編を見ていると「スゲー面白そう!」と思う反面、「いかにもハリウッドのスペクタクル映画って感じだな」とも思いました。
こういう映画は、あまり見ないんですよね。
「ああ、面白かった!」とその時は思うけど、しばらく経つと何も残ってない・・・となりがちだからです。
まあ、それでも良いのですが、僕としては、後々まで何かが残る作品の方が好きなんですよね。

さて、本作ですが、口コミ評価がかなり高いし、映画にうるさい僕の知人も「『ラ・ラ・ランド』はクソだが、『キングコング』は素晴らしい!」と絶賛していた(ただ、彼は好き嫌いが激しい)ので、観に行くことにしました。

『モアナと伝説の海』と同じ、4月1日(ファーストデー)に観たんですが『モアナ…』は満員御礼でしたが、『キングコング…』の方は混雑はしてたけど、空席もポツポツありました。

ただ、映画としては、たしかに「面白いっ!!」と唸らされるレベルのもの。
映像の臨場感が素晴らしいし、スリリングなストーリー展開で、最後まで緊張感が持続します。

謎の島で巨大生物に襲われる恐怖感が良く出ていると同時に、人間ドラマもきっちり描かれていて、ハリウッド映画の良作の典型だと思いました。

ただ、これまでのハリウッド映画にはなかった新しい要素もあったと思います。
まず、描かれている自然観が東洋的です。
自然の中には善悪はなく、相互が循環してバランスを保っている。
そういう世界観が出ています。
キングコングは神のごとき存在なんですけど、それは一神教のGODではなく、多神教の神、英語でいうとDeityとでも言うべき存在なんですよね。
ハリウッドには東洋かぶれの人も多いのでしょうが、こういう世界観が描かれているのは、ハリウッドではちょっと珍しいかな・・・と思いました。
ただ、911以降は、アメリカ社会の善悪二元論が揺らぎ、世界観が多様化していることは強く感じていましたが、それが映画界の成熟ももたらしていると言えると思います。

*** 以下、ネタバレあり ***

あと、本作は『地獄の黙示録』を意識しているなあ・・・と思いました。

ジャングルの風景や、軍用ヘリが飛ぶシーン、ジャングルの中の遺跡や原住民の風景が、『地獄の黙示録』を想起させます。
でも、それだけではない。
この映画、裏側で戦争が描かれているんですよね。
冒頭からして、太平洋戦争の時代です。
ここで敵同士の兵士が、謎の島(キングコングをはじめとする巨大生物が生息する)に迷い込んでしまう。
これが後半の伏線にもなっています。

で、メインとなる探検はベトナム戦争の終結後です。
時期だけではなく、ベトナム兵を島の探検のガード役に雇っています。
で、現地でドンパチやるわけですが。
これはもう、明らかにベトナム戦争の象徴ですね。
しかも、ここのシーンが『地獄の黙示録』をオマージュしている。

そして、ラストシーンに冒頭で行方不明になった兵士が、老境に差し掛かりながらも帰還するわけですが・・・
日本人には良くわからないところだと思うんですが、アメリカ人が見ると、イラク戦争の帰還兵と重なって見えてくるんじゃないかと思うんですよね。

そういう意味で、この作品はエンターテイメントバリバリに見せかけながら、裏側では、太平洋戦争、ベトナム戦争、イラク(+アフガン?)戦争という、3つの戦争を描いている気がするんですよね。
しかもそれが、「善悪の戦い(そして善の勝利)」ではなく、「ある種の秩序を巡った混沌とした戦い」として描かれている。
エンタメ作品でこういう世界観を描くようになっているわけですから、ハリウッド映画、あるいはアメリカ社会ってかなり成熟したんだなあ・・・と痛感します。

何も考えずに見ても十分面白いですが、意外に奥が深くて、考えながら見ることもできる作品です。


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