報告遅くなりましたが、3月14日は「TOHOシネマの日」で、1100円で映画が観れます。

「これは絶対観たい!」という作品はなく、「観たい映画はいくつかあるけど、どれを観ようかな?」というところでした。

今回は『彼らが本気で編むときは』を選択。

彼らが本気で編むときは

『かもめ食堂』の荻上直子監督作品で、評判も良かったのが理由。
観てよかった!
と思える映画でした。

いくつかレビューしましたが、2016年は映画元年と言えます。

『リリーのすべて』は丁寧に作られた良作

酷評されているけど僕は良いと思った『ストーンウォール』(1086本目)2016年12月25日 『ハンズ・オブ・ラヴ 手のひらの勇気』はドキュメンタリータッチの感動作(1083本目)

酷評されているけど僕は良いと思った『ストーンウォール』(1086本目)

『怒り』はミステリーではなくヒューマンドラマとして観たい(1038本目)

やや遅れてきた本作も、LGBTを扱った映画です。

「かもめ食堂」の荻上直子監督が5年ぶりにメガホンをとり、トランスジェンダーのリンコと育児放棄された少女トモ、リンコの恋人でトモの叔父のマキオが織り成す奇妙な共同生活を描いた人間ドラマ。生田斗真がトランスジェンダーという難しい役どころに挑み、桐谷健太がその恋人役を演じる。11歳の女の子トモは、母親のヒロミと2人暮らし。ところがある日、ヒロミが育児放棄して家を出てしまう。ひとりぼっちになったトモが叔父マキオの家を訪ねると、マキオは美しい恋人リンコと暮らしていた。元男性であるリンコは、老人ホームで介護士として働いている。母親よりも自分に愛情を注いでくれるリンコに、戸惑いを隠しきれないトモだったが……。

彼らが本気で編むときは: 作品情報 – 映画.comより。

生田斗真は『人間失格』を観た時はイマイチだと思ったんですが(俳優の問題よりは、作品のつくりの問題もあると思うけど)、今回はトランスジェンダーの役をうまく演じていたと思います。
トランスジェンダーの人たちから観るとどういう評価になるかは分かりませんけどね。

リンコの存在が優しくて細やかで、人々を癒す存在となっている。
登場する女性が、男っぽいところがあるのとは対照的で、本当に女性らしいんですよね。
こういう描き方をしているのは、リンコの女性らしさを強調するためというよりは、生物学的な性別と、心の性別が全く違うものだということを示すためだと思います。

これ以外にも、本物の家族よりも他人同士の方が家族らしかったり、子供の方が大人より冷静だったり、そんな描き方をしています。

これって、是枝裕和や西川美和の作品の主題ですよね。

荻上監督は、本作では、この二人からかなり影響を受けているんじゃないかと思います。
だから、映画を観ていても既視感を覚えたりもします。
個人的には、荻上監督はもっと独自路線を出していってほしいなあ・・・と思います。
これからの日本の映画界を担う才能だと評価しているので、敢えて。

もう一つ、本作に特徴的なのは、モノや登場人物の言動に意味が込められている点です。
ちょっとしたシーンでも丁寧に、意味を持たせて作っている。
タイトルにもある編み物が象徴的です。
他にも、生まれた年のコイン、鼻歌なんかのちょっとしたことが、家族関係、あるいは人それぞれの思いを象徴するように作られています。
この辺はすごく上手いですね。
荻上監督のお家芸と言ってよいと思いますが、本作ではそれが遺憾なく発揮されています。

『かもめ食堂』を観た際に、ゆったりした映像のつくりが心に沁みてきたのですが、本作でもその手法はすごく生きてきています。
特に、リンコとマキオの関係や、そこにトモが混じったシーンがそうなんですよね。
あからさまに語らず、まったりしたシーンが、逆に相互の愛情を際立たせています。

逆に、少し残念だったのが、差別意識の強い登場人物が、あからさまに描かれている点です。
こういう作品は、あえて明示せず、暗示するところが魅力なんですが、いくつかの点であからさまな明示があります。
「差別への反対」というメッセージが込められているんでしょうが、もう少し抑制を利かせた方が良いんじゃないかなあ。
「人権啓発映画」とまでは言えないけど、その要素が散りばめられていて、「ちょっと押しつけがましいかな」と思えるところもありました。

全体としては素晴らしい作品だと思うのですが、それだけにディテールで気になるところが散見されたという感じです。
でも、やっぱりオススメの映画。


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