会社員時代、映画館で見ようと思っていたのに、忙しくて見逃してしまった映画が結構あります。

『グランドブダペストホテル』もそうでした。

第64回ベルリン国際映画祭審査員グランプリ
第87回アカデミー賞の4部門
ゴールデングローブ賞 映画部門 作品賞 (ミュージカル・コメディ部門)

と有名な賞を多数受賞している、玄人受けしている映画ですからねえ。

だから、BSプレミアムで再放送やってくれた時は「おおっ!」って感じで、見入って(魅入って)しました。

まずは、絵本のように映像が美しいです。
ただし、描かれている世界は、大人の世界で、暴力ありセックスありです。
絵本風に描かれているので表現は露骨ではありません。
それが、過去になかった独自の映像世界になっています。

架空の世界の話ですが、現実社会ともつながっています。
メインになるのが、ナチス政権前後の時代の中欧がモデルになっていると思うんですが・・・
日本のアニメ『風立ちぬ』『この世界の片隅に』を見ていても思うんですが、最近は戦争の賛辞をあからさまに描かなくなってますね。

あの時代の戦争を直接経験した人たちの大半が亡くなってしまっていることを考えると、あの時代を表現する方法論も変わっているということでしょう。
ファンタジックに描きつつ、絵空事にしないという、そういう表現手法は日本も欧米も同じ方向に行ってるかもしれないと思いました。
ただ、『グランドブダペストホテル』のような表現がメインストリームになってる感はないですが。

さて、ストーリーは複数の時代が入れ子になっていて、描かれる時代によって映像のアスペクト比(縦横比)が変わります。
途中までこの事実に気づかず、「なんで縦横比が変わってるの?」と思ってしまいます。
こんな感じで、わかる人にはわかる仕掛けが多数仕込まれているんじゃないかと思います。
「じゃないか」と書いたのは、僕が気づいていないところもたくさんありそうだからです。

で、物語としては、グランドブダペストホテルのカリスマオーナーの一代記で、あらすじだけ読むとさほど斬新な話ではないです。
ところが、物語が多層的になっていて、「こっちの方向に行くかな?」と観客に思わせていたかと思うと違う方向に展開したりして、「あれ??」っていう感じになるんですよね。
観客をミスリードさせるための計算がかなりなされているのかな・・・と思いました。

冒頭からして、ホテルに集まる変人たちの交流記かな?
と思わせておいて違った方向に話を持って行っています。

こういうのは映像ならではの表現だと思います。

イギリス、ドイツの合作ということもあり、アメリカ映画とは違った味わいがあります。
個人的には、ヨーロッパ映画がもっと再活性化して、アメリカ映画と影響を与え合うと、この映画のような、表現の幅が広い、アートとエンターテインメントが両立した良作がもっとできるんじゃないかなあ?
と思います。

深い感動を受ける類の映画ではないですが、サスペンスでハラハラして、コメディに笑い、映像にウットリして・・・みたいな感じで、上質の時間が過ごせる映画です。

先日、『ラ・ラ・ランド』のレビューを書きましたが、技巧的にビジュアルを作り込んで敢えて作りものっぽく映像を仕立てる手法は、『ラ・ラ・ランド』的なものよりは、『グランドブダペストホテル』的な方が僕は好きですね。

この世界観、表現手法をウェス・アンダーソン以外の人が引き継いで、定着させてくれないかなあ・・・


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