『この世界の片隅に』
    この世界の片隅に

    やっと観れました。
    公開からだいぶ経ってますが、まだ席は結構埋まっています。

    地味な作品ながら、クラウドファンディングで資金集めしたとか、干されていた、のん(能年玲奈)の再起をかけた作品だとか・・・周辺ネタで話題になりました。
    一方で、作品が素晴らしいという評判を呼び、想定外のヒットを続けています。

    実際、作品は素晴らしく、「おっ!」と言わせるものでした。
    舞台が第二次世界大戦中の広島となると、結末はある程度推測できてしまいます。

    戦争もので、原爆が落ちるんだろうなあ・・・と思うと、なかなか観に行く気分にはなりません。

    でも、本作は特別なんですよね。
    反戦映画ではあるけど、それだけではない。

    人生とは何か?
    家族とは何か?
    幸せとは何か?

    という根源的な問いを発している作品です。

    冒頭からハッとさせられたのは、のんのセリフ回しの上手さです。
    『あまちゃん』の能年玲奈は良かったですが、特別好きなわけでもありませんでした。
    その後の『ホットロード』は役柄があってない感じがして、ピンと来ませんでしたね。
    でも、『この世界の片隅に』では、主人公に魂が入っているというか、命が吹き込まれているというか、そんな感じがします。
    北条すずという、ぼやっとした、ちょっとどんくさい女性なんですが、その語り凄くフィットした感じなんですよね。
    のんでなければ、全然違う雰囲気の作品になったんじゃなかろうか?
    声優としても才能あるんだなあ・・・
    干されて埋もれてしまうには惜しい人材だと思いました。

    さて、作品の方ですが、戦時中にもかかわらず、前半は戦闘シーンなんかは出てこず、すずを巡る人日の物語が淡々と進んでいきます。
    以前レビューした、『紙屋悦子の青春』を彷彿とさせてくれます。

    地味な名作『紙屋悦子の青春』(1027本目)

    *** ネタバレあり ***

    前半はあまり起伏がないし、ストーリーの展開も遅いのですが、退屈なわけではありません。
    何より映像が美しいし、ひとつひとつのシーンにしっかり意味が持たされていて、何気ないシーンでもじわっと感動してしまいます。

    で、後半は戦争によって、生活が破壊されてく様子が描かれます。
    でも、昔の映画と違って、悲惨さが強調されているわけでもないんですよね。

    日常を破壊していく戦争という暴力的な存在に対して、それでも日常を成り立たせようとする人々の力との拮抗がある。
    前者よりも後者の方が強調されているので、観ていて暗い気持にはなりません。
    北条すずという役柄の凄さは、ぼやっとして弱そうながら、淡々と日常っていく守る内なる力を有している点ですね。

    戦争を描いているにしては、映像が美しすぎるきらいはあります。
    『風立ちぬ』の時も「戦争を美化している」みたいな批判がありました。

    本作も、戦争を肯定しているわけでは絶対にないし、しっかりした反戦映画としても成立しているとは思います。
    しかし、アニメで戦争を描くことの難しさというのはあるなあ・・・と思います。

    観客の大半が、戦争をリアルに体験していない人たちなので、伝え方も時代によって変わっていかざるを得ないというのは、事実ではあると思います。

    最後になりますが、エンドロールにクラウドファンディングの協力者の名前が出ていたのも素晴らしい試みですね。

    こういう作品が作られて、しかもヒットする日本は捨てたものじゃないですね。


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