映画レビューシリーズ。
本日は『細雪』。
言わずと知れた、谷崎潤一郎原作の名作小説を映画化したものです。
関西の四季と、美人姉妹が美しく映像化されています。
ただそれだけでも、十分に見る価値はある作品です。
文豪の名作だけに、物語の構成もしっかりしていて、佳作であることには間違いありません。
市川崑監督の作品だけに、映像の撮り方が、金田一耕助シリーズを彷彿とさせます。
日本人形を作るシーンなんかは、無意味に怖さが漂ってきます。
サスペンスでもホラーでもないのですが・・・
なんか、見ていると、殺人事件の起こらない、横溝正史ものという連想をしてしまうんですよね。
家族、特に姉妹の濃厚な人間関係を描いていて、そこに確執が生まれたりする。
でも、それは深刻なものではありません。
ここで遺産相続の問題が発生したり、恨みつらみがあったりすれば、横溝正史の世界のような殺人事件が起きて、金田一耕助が登場するんじゃないかと・・・
市川崑の濃厚な作風は、金田一耕助ものだからこそ生かされている部分があるかと思います。
そういう意味では、事件らしい事件が起こらない本作は、ちょっと物足りなく感じてしまうんですよね。
小津安二郎ほどには、淡々と描く世界に多くの意味や深い情感を込めるのには成功していない気もします。
まあ、それでも十分見る価値のある作品ではあります。