ハドソン川の奇跡

映画『ハドソン川の奇跡』

昨日は映画の日(ファーストデイ)だったので、観てきました。

クリントイーストウッド監督 × トムハンクス主演

これだけで良作であることは約束されたようなものです(?)

映画の日なのに、座席は結構空いていました。
配給会社からしてみると、見込み違いだったんじゃないかと思います。
理由はわかりますがね(後で書きます)。

本作は、実話をもとにした作品です。

2009年にハドソン川に航空機が不時着するんですが、死者はゼロ。

機長はヒーローとして称賛を集めました。
英語のタイトルは”Sully”で、機長の愛称です。
『サリー』というタイトルにしてしまうとちょっと違和感があるけど、『ハドソン湾の奇跡』というのも若干違和感があります。

2001年のアメリカ同時多発テロ以降、アメリカ映画は変わってきていると思います。
特に、イーストウッド作品は深みを増していると思いますね。

『ミリオンダラーベイビー』(2004)
『グラントリノ』(2008)
『アメリカンスナイパー』(2014)

あたりを追って見ていくと、イーストウッドがアメリカのヒーロー像を見直そうとしているのが伺えます。

みずからアメリカンヒーロー像の一端を担ってきたイーストウッドが、911以降はそのイメージを否定とまでは言わないまでも、大幅に見直そうとしているように見えます。
正義を振りかざし、悪に対して暴力で立ち向かってきたアメリカンヒーローの価値が揺らいでいる。
最近のイーストウッドは、「自分たちが正義だっと思っていたことは本当に正しかったのか」「正義を行使しても、自らも傷つかずにはいられない」ということを伝えようとしているように思えます。
イーストウッド自身、まだ結論が出ていないように思えます。

前置きがなくなりましたが、『ハドソン川の奇跡』の話に戻しましょう。
邦題が違和感があるのは、タイトルからは美談に見えてしまうからです。

墜落の危機を機長の機転と勇気で回避し、乗客全員を救った。

というストーリーだけなら、あまり観る気がしなかったと思います。

*** ここからネタバレあり ***

しかし、本作は、映画が始まった時点ですでにこの事件は終わってしまっているんですよね。
事故のシーンは後で回想として出てきますが、メインは機長のサリーがメディアで称賛を集める一方で、判断の正当性を問われ厳しく追及される、事後の部分です。
空港に引き返すこともできたんじゃないか? どうしてそうしなかったか? が追及されるんですよね。
サリーは、ヒーローになったのに、四六時中浮かない顔をして悩んでいる。
容疑者になっただけでなく、メディアで称賛されることの戸惑いもあったんだと思います。

最後はサリーの判断が正しかったという結論になり、メデタシメデタシではあるのですが、どうもスッキリしないヒーロー像ですね。
サリーが最後に「自分の力ではなく、副機長や乗務員や乗客や救助に当たってくれたみなの功績だ」と発言します。

アメリカ、特にニューヨークはまだ911を引きずっているんだな・・・と思いました。
テロの直後にニューヨークに住んでいる人から話を聞いたのですが、ニューヨーカーはブッシュ大統領に追随して報復だ!とか叫んでいる人が多数派では決してなく、どうやったらこの苦境を脱することができるのか、住民が連携しながら事態の打開を目指していたと言っていました。
その姿は感動的だったとも。

この「ハドソン川の奇跡」の出来事がアメリカ人、特にニューヨーカーから称賛を集めるのは、911の苦難を味わったあと、人々の連携で苦難を克服し、死者ゼロで終わらせるということを成し遂げたからだと思います。
単なる事故とそこからの適切リカバーということだけではなく、暴力を伴わない911テロへのリベンジとも捉えられます。

だから、イーストウッドがこの事件を映画化することは十分な必然性があったし、このような作風になったことにも十分な必然性がある。

一方で、日本人が見て良い映画だと思ったとしても、上のような実感は得られないんじゃないかな。
なかなか自分ゴト化されずらいし、この事故自体があまり魅力的な出来事とは映らないんじゃないかと思います。

そういえば『BRAVE HEARTS 海猿』って2012年の作品だけど、ハドソン川の奇跡をベースにしたものなんだろうか?
事故の状況が似てますね。

本作も良くできていて、日本映画の中ではスケールも大きかったです。
ただ、ハリウッド映画を意識しすぎてるかな・・・と思いました。

『ハドソン川の奇跡』を観て、本家のアメリカ映画の方が、違った方向に行っているのかもと思いましたね。
余談ながら、日本映画はヘンにハリウッド映画を意識しないで、独自に発展した方が良いと思います。


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