ポーランドの巨匠アンジェイワイダについては、『大理石の男』のレビューを以前書きました。

僕たちはみな「大理石の男」

今回は『約束の土地』について書きたいと思います。

『約束の土地』が1975年、『大理石の男』が1977年と連続していますが、鑑賞、およびレビューの順番は逆になっています。

初期の「抵抗三部作」(『世代』『地下水道』『灰とダイヤモンド』)は主題もストーリーも比較的分かりやすいですが、この時期の作品は登場人物も多いし、ストーリーも交錯して複雑になっています。

わかりづらくなっているとも言えますが、作品が多角的と言うか、立体的と言うか、そんな感じになってきていると思います。
これ以前の映画作品と比べると、エロ・グロ度も強いです。
映画で表現してよいエロ・グロの幅が広がったのも、この時代あたりからかな?と思います。

『大理石の男』を観ると反社会主義の作品に見えますが、『約束の土地』の方は資本主義批判に映ります。
政治的な信条がどうこうではなく、ワイダは権力に翻弄され、抑圧される人々の声を描きたいんだな・・・と思います。

あらすじは、allcinemaから引用させてもらいます。

19世紀末、列強の分割統治を余儀なくされていたポーランドの工業都市ウッジに、ユダヤ人のモリツ、ドイツ人のマックス、ポーランド人のカルロという三人の国籍も育ちも異なる若者が自分たちの製糸工場建設に向かって共に働き始める。やがて夢は叶えられ、彼らの事業は急成長するが、旧資本に睨まれ、新工場を放火で焼失以来、傾いてしまう。と同時にわき起こる労働運動に、結局、彼らも強圧的に対処する他なく、旧資本の介入も受け、三人の夢はバラバラにほつれていく。

古い体制に抗った若い起業家の成功と挫折が描かれています。

現代日本でもライブドア事件が起こってますから、時代も国も超えて、こういうことは起こり得るんだな・・・と思いました。

面白いのは、ポーランドに資本主義が浸透していく過程です。
チャップリンの『モダンタイムス』でもあるような、資本家が経営する工場で、労働者は危険で過酷な肉体労働を強いられる。
これがどこまで現実を映しているものかは分かりませんが、現在の資本主義社会の成立の前には、資本家と労働者の激しい対立があったんですね。

そうした中で、若い起業家が新しい資本主義を作ろうとして夢は破れる。

その後のポーランドを観ると、挫折したのは彼らだけではありません。
ナチスドイツに侵攻され、ソ連の影響下で社会主義政権が誕生し・・・と過酷な歴史を辿ります。

ワイダの映画は政治的だと言われますが、ポーランドを舞台とする映画を撮る以上、政治とは無関係ではいられないんじゃないかと思いますね。

それでいて、時代や国を越えて通用する普遍性のある作品を作り得ているのは、やはりアンジェイワイダという稀有な才能のなせるワザだと思います。


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