ゴジラ像
シャンテ前のゴジラ像

これまで『シンゴジラ』に関して三度書いてきましたが、今回が最後です。

『シンゴジラ』は本当に名作なのか?(1018本目)

『シンゴジラ』で描かれている日本人の愛国心

『シンゴジラ』は国家平定説話だと思った

ちょっと批判的なことも書いてきましたけど、色々と語るべきことがある作品ですよね。

で、一番この映画で斬新なところは何かと考えると、大衆向け映画であるにもかかわらず、政治思想(と書くと大げさですが)を表現している点ではないかと思います。

『シンゴジラ』は庵野監督の過去作品を中心に、多くの作品の影響を受けていると思います。

ハリウッド映画では、『インデペンデンスデイ』の影響を受けてるんではないかと思いました。
『インデペンデンスデイ』(リニューアル版じゃない方)が上映された時は、僕は学生でした。

当時、好きだった女の子との初デートで観たのがこの映画でした(笑)。
映像もストーリーも良くできていたのですが、アメリカ覇権主義丸出しで、興醒めしてしまいました。
一緒に行った子は「スゴイ面白かった~♪」と喜んでいましたが・・・

さて、『インデペンデンスデイ』ですが、主人公が誰だったかなぁ?という感じです。
登場人物がたくさんいて、凄く目立つ主人公がいないんです(主人公らしき人はいますが)。
特定のヒーローが超人的な力を発揮してエイリアンを倒して、メデタシメデタシ・・・というつくりにはなっていない。
多くの登場人物が出てくるんですが、政府関係者、民間人それぞれが自分の強みを活かし、協力してエイリアンを撃退します。
アメリカ大統領が演説し、アメリカ主導で世界各国の人たちが鼓舞されて力を合わせていくその姿は、アメリカが描いている理想の世界像だったと思います。

こういう映画を当時の日本が撮ったらどうでしょう?
建国記念日にエイリアンが襲って来る。
日本政府のリーダーシップと自衛隊の防衛力と、民間企業の技術力を結集し、日本のもとにアジア各国が集う。
新大東亜共栄圏ともいうべき、同盟を作り上げて、エイリアンを撃退してメデタシメデタシ。
産経新聞以外の大手メディアはこぞって批判したと思うし、決してヒットもしなかったと思います。
僕が観たとしたら、「なんで政府のプロパガンダ映画を、金払ってみないといかんのじゃ!!」と激怒したと思います。

『シンゴジラ』の話題なのに、延々と脱線してしまいました。
『シンゴジラ』には『インデペンデンスデイ』のような覇権主義思想はないし、プロパガンダ性はありません。
でも、物語の構造以外に、政治メッセージの出し方としても、『インデペンデンスデイ』を彷彿とさせるものがありました。

もう少し寄り道させてください。

1992年に出た本ですが、『ゴジラとヤマトとぼくらの民主主義』(佐藤健志)という本があります。

この本、とても面白く読んだ記憶があります。
戦後の日本は「戦後民主主義」が根付いたように見える。
でも、その反動として、アニメや大衆映画の世界ではナショナリズムや集団主義が肯定されて描かれる。

『シンゴジラ』は初代ゴジラを踏襲していると書きましたが、良く考えると根本的なところで違いがあるんですよね。
それは、過去のゴジラが水爆実験によって目覚めている点です。
元々のゴジラは、反米・反核思想があったんですよね。

『ゴジラとヤマトとぼくらの民主主義』では、日本が戦後民主主義を受け入れ、アメリカの傘の下で繁栄を謳歌しつつも、屈折したナショナリズムを抱き続ける日本人の心象が暴かれます。
さらに、虚構の世界に安住して、成熟できないでいる日本の姿も。

『シンゴジラ』におけるゴジラは、アメリカを象徴しているようには見えないですよね。
むしろ、日本とアメリカが連携してゴジラを倒そうとします。
アメリカが主導する多国籍軍は熱核兵器を使用しようとする。
特に、アメリカが強い圧力をかけてくる。
日本側は、外交により時間稼ぎをして、並行して血液凝固剤による穏当な解決策を模索する。
大衆映画で、政治的な駆け引きを、リアリティある緻密な描写をしているのが凄いし、僕の知る限りはこういう表現をした日本のエンタメ映画では観たことはないですね。

そういう流れの中で『シンゴジラ』を見直してみます。
戦後民主主義とリアリティのないナショナリズムが、矛盾を問われることなく共存してきたこれまでのエンターテインメント作品とは一線を画し、戦後民主主義社会の矛盾を暴きつつ、これから日本が進むべき方向性を示しているという点で、非常に新しいんじゃないかと思いました。

良くも悪くも、アメリカという国は、「世界での紛争には自らリーダーシップを取って解決に当たる」という意識が強いせいで、『インデペンデンスデイ』みたいな映画を普通に作って、普通に上映して、大ヒットさせてしまったりするわけですが・・・

そんなわけで、ニッポンの一般大衆も戦後民主主義の幼児性を脱却して、大人になって政治的な責任をちゃんと自覚すべき・・・という時代が来ているってことなんでしょうね。

ゴジラが倒されても、そのままの姿で東京のど真ん中に居続けているのは。象徴的だと思います。

その延長線上には、安保同盟やら憲法改正やら基地問題やら、いろいろ解決しなければならない課題がありそうですが、日本人はもうそこから目を逸らすことはできないんでしょうね・・・
安倍総理が本作を観ているかはしりませんが、もしご覧になっていたらお喜びになられているんじゃないかと思います。

未読ですが、佐藤健志氏は2014年に下記のような書籍をお書きになっています。
『シンゴジラ』はこの本を参考にして作られたんだろうか?? と思います。


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