ブルックリン

映画の名前に地名が付いている場合は、その土地こそが裏の主人公と見ても良いかと思います。
『マンハッタン』『パリジュテーム』『コーリャ愛のプラハ』『北京バイオリン』『ブエノスアイレス』等々・・・

というわけで、今回は、映画『ブルックリン』です!

この映画も良かったですよ!
今年のアカデミーノミネート作品は良作ぞろいですね。

アメリカ映画は、色々な意味でアメリカ社会の特徴を表現しているものが多いのですが、本作は移民によって成り立つニューヨークという都市を活写しています。
ニューヨークに行ってみるとはじめてわかるのですが、この都市は人種のるつぼと呼ばれているけど、完全に混ざり合ってるわけではないんですよね。
地域ごとに特徴があり、住んでいる人も違えば、文化も微妙に違う。

映画のタイトルになっているブルックリンというのは、まさに移民がモザイク状に混ざり合っている街なんですよね。
なかなか東京とは比較しづらいですが、池袋に中国人が多かったり、大久保にコリアンタウンがあったりしますが、そういうのがもっと濃厚にある感じでしょうか?

さて、映画の時代は1950年代。
主人公はアイルランド移民の女性。

主人公が異国の地で仕事をし、恋をして・・・
みたいな話です。
既視感があるような物語ではありますが、とても丁寧に作られていて、飽きさせません。

*以下、ネタバレあり*

起承転結がはっきりした物語で、起承の部分がやや長いので、そのまま話が流れるかと思ったのですが、主人公の姉が亡くなり、アイルランドに一時帰国するあたりから展開が変わってきます。
故郷のアイルランドと新天地のアメリカの間で揺れるんですね・・・

『物語の体操』(大塚 英志)という好著があります。

本書によると、物語は「行きて帰りし物語」が原型になっていると言います。
「行きて帰りし物語」というのは、「指輪物語(ロードオブザリング)」のプロローグである「ホビットの冒険」の副題でもあります。

主人公が旅に出て、元の場所に戻ってくる。
ただし、その間に様々な変化がある。

大塚英志によると、「たまに行ったきりになって戻って来ない物語がある」とのこと。
村上春樹の中期の作品はそういう作品なんだそうです。

そういう視点から捉えてみると、「ブルックリン」は「行って戻って再び行く」という物語の構造をしているんですよね。
これは、一種の変化形と言えるかもしれません。

ただ、かつて「新大陸」と呼ばれ、いまでも「希望の地」でなければならないアメリカにとっては、最後に主人公はアメリカに安住の地を見出さなければならないんですよね。
そうでなければ、アカデミー賞の候補にはなれません(!?)

『オデッセイ』の主人公が地球に戻ってこなければならないのと同じように・・・

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