3連休は色々やったので、書ききれていませんでしたが、DVDで観た『飢餓海峡』をレビューします。
観た映画の本数をブログ表記するようにしてからといもの、歯抜けになると気持ち悪いので、全部レビューをせざるを得ない状況に陥ってしまった
さて、本作は1965年に作られた日本映画で、モノクロです。
しかも暗いです。
休日に観るような映画ではないのですが、「名作だから観るべき」と知人に勧められていた上に、口コミ評価も高かったので、鑑賞に及んだ次第。
『砂の器』と並ぶ日本映画の傑作
と呼ばれていますが、たしかに内容や作風から言っても『砂の器』を想起させられます。
戦後の貧困を味わった者が、過去を捨ててのし上がるが、過去を完全に消し去ることはできず・・・
という、同じ構造をしているんですよね。
戦後の貧困の時代は、キレイごとでは生きていない、ドロドロした世界が渦巻いてと思うのですが、高度経済成長を経て、人々はそんな過去を忘れ去ってしまったんでしょうね。
一方で、消し去ることのできない過去を抱えて生きている人もいて、そういう人々を一部の文学や映画が掬い上げている。
そんな感じがします。
水上勉原作で、松本清張作品とは異なって、ミステリー要素よりは人間ドラマの方に重点が置かれています。
三國連太郎と高倉健という、近年亡くなった二大俳優が出演していますが、若い!!
三國連太郎演じる主人公の犬飼多吉が、精神に異常が生じる時に、画面がガーっと粗くなるんですが、その表現が凄いんですよね。
技術の発達していない時代に、こういう表現をしているのがさすがと思いました。
純粋な心を持った娼婦とか、貧困の描き方とかは、やはり昭和前半のドラマですね。
時代を感じさせるところはありますが、ああ昔はこうだったんだなあ・・・と逆に新鮮です。
犯罪は時代を反映すると言います。
だから、犯罪を扱った小説や映画もまた、時代性を大きく反映しています。
最近のミステリー作品を観ていても、やはり現代の犯罪を描いていますからね。
でも、観ていて思ったのは、新しい形の「貧困」が生まれている現在、それを描いた名作が生まれても良いかなあ・・・と思いました。
いくつかありますけど、歴史に残るほどのものはない気がします。
いまは、ドラマチックな時代ではないのかもしれません。