スペインは映画大国とは言えないかもしれませんが、たまに独創的なスゴい映画を作ってきます。
例えば、『ミツバチのささやき』『オープンユアアイズ』なんかがそうです。
昨日(水曜日)は映画ファン感謝デーだったので、『マジカルガール』を観てきました。
最初は観に行く予定はなかったどころか、名前も知りませんでした。
単館上映で、東京でも2館でしかやってませんでしたからね・・・
映画好きの知人が絶賛していたのと、評論家の評価も高いようなので、足を運んでみた次第です。
いやー、本作品はスゴい。
上で挙げたスペイン映画の名作群に加えても良いでしょう。
監督カルロス・ベルムトの初の劇場向け長編映画とのことですが・・・
『メメント』を観たとき、「スゴイ監督が現れたなあ」と思っていたら、クリストファーノーランは一気にメジャーになりました。
その時と同じくらい、才気を感じましたよ。
さて、本作は、失業中の教師が、日本アニメオタクで白血病を患っている娘に、「魔法少女ユキコ」(架空の魔法少女物アニメ)のコスチュームを買ってあげようとするところからはじまります。
しかし、コスチュームは高すぎる。
これを買うために、たまたま一夜を過ごしたメンヘラの人妻を脅迫するのですが・・・
最初は「心温まる父娘の物語」かと思わせておいて、どんどんブラックな方向に進行していく。
事前情報でそっちに行くことは分かっていたのですが、それを置いても、想定外の展開をします。
この展開のしかたがすごいんですよね。
単館上映映画にありがちな、「予算はかかっていないけど、センスの良い映画」というところに落ちるかと思いきや・・・
主人公だと思っていた父娘が途中からほとんど出てこなくなって、視点が移ってしまう。
伏線がいくつか貼られているにも関わらず、回収されないままに話が進んでしまう。
ハリウッド映画をはじめとする、普通(定型)の作りのエンターテインメント作品を見慣れていると、置いて行かれてしまいます。
伏線は最後の方にバタバタと回収されていくのですが、新たに謎が出てきたりして、すっきりしないまま映画は終わります。
観た人の解釈、想像力に委ねられている部分も多くて、余韻が残ります。
観た後感動する作品でもなければ、幸せな気分になれる作品でもないのですが、不思議と何かがしっかり残る作品なんですよね。
こういうタイプの映画はこれまでなかったので、やっぱり監督カルロス・ベルムトは処女作にして新しい領域を切り開いたと言っても良いと思います。