労働者の皆さま、今日も一日ご苦労様です

角が立つので表立って言えませんが、結婚式に行くのが嫌いです。

ご祝儀で大金が吹っ飛ぶ、休日なのに正装で窮屈・・・というのもありますが、表だけ取り繕った感がどうにも居心地が悪いんです。

新郎も新婦も、純愛を通してきた人たちではなかったり、完ぺきな人間ではなかったりするので、悪いところは見せず、良いところ、華やかなところだけ切り出して過剰に演出する。

参列者も、実際を知りつつ、あからさまには裏話はしない(コソコソしたりはしますが)。
心の中では、「先を越された!」「私の夫の方が収入高そう」とか「イケメン/美人と結婚しやがって悔しい」等々、色々屈折した思いを抱いていると思います。
にもかかわらず、「キャー、おめでとう!」とか「幸せになってね~♪」とかテンション高く祝福する。

そんなところに違和感を覚えるわけです。

なんで、大金払って、自分を偽って、テンション上げて、おべんちゃら言わなきゃならんのだ!・・・と。

まあ、大人の世界ですから、そういうのは受け入れないとダメなんでしょうが。
そういうプレイを楽しむ場だと思えば、結婚式に参列するのも楽しいかと思います(!?)

と言うわけで(?)、昨日『リップヴァンウィンクルの花嫁』のレビューを書きましたが、その続きを書きたいと思います(前置き長すぎ!)。

「リップヴァンウィンクルの花嫁」は久々の邦画の名作

リップヴァンウィンクルの花嫁1

*以下、ネタバレあり!*

本作品の前半は、上記のような違和感を白日の下にさらけ出してくれる。

主人公の皆川七海(黒木華)は派遣教員で、SNSで知り合った鉄也と結婚する。
七海の母は若い男を作って駆け落ちしてしまってるんですが、父母は結婚式では夫婦を装って出席。
お互いの両親同士の会話を見ても、結婚生活がうまくいかなさそうであることを暗示させます。
加えて、親族の参列者が少ないことを気にして、ネット友達(?)で何でも屋の安室(綾野剛)に代理出席の斡旋を頼む。
披露宴の直前も、相手の哲也が、七海が書いたネットの匿名の発言を見て、疑いを抱いたりする。
最初から、虚偽に満ちた結婚だったんですね。
(現実の結婚も多少はそんなとこあるんでしょうが)

新婚早々、夫に浮気の疑いが・・・
ってことで、安室に調査を頼むんですが、逆に、七海の方が浮気の疑いを掛けられて、家を追い出されてしまう。

路頭に迷う七海の姿が長回しで映し出されるんですが、この時の黒木華の演技が凄いんですよね。
名前とは裏腹に、外見的には華のある女優さんではないし、演技自体も大人しいんですが(元々地味で大人しめの女性と言う役柄もありますけど)、感情が凄く伝わってくる。
日本屈指の実力のある女優さんだと思います。
全体として言えるんですけど、あまり自己主張しない演技をしつつ、最後にはしっかり存在感が植えつけられている・・・
不思議な女優だと思います。

「主人公の脇が甘すぎる!」とか、違和感と言うか、不自然なところは多々ありますが、そこは目をつぶって、ファンタジーとして見るのが良いと思います。

さて、離婚後は安室に斡旋されて、七海は色々なバイトを経験するのですが・・・
この辺から、安室が狂言回しの役割を担っていることが分かります。
安室を演じる綾野剛ですが、『ロンググッドバイ』(NHKのドラマ)では、あまり印象には残ってなかったんですが、いかがわしいキャラクターのイメージをうまく出しています。

普通であれば、結婚相手の哲也とか、相手の家族とか、前半の登場人物が後半も何らかの関わりを持ってくるものなのですが、ストーリーは全然違う方向に転んでいくんですよね。
「あれあれ?」と思いながらストーリーを追っていって「ああ、こういうことなんだな」と読めたかと思うと、また別の方向に転びはじめる。
この予定不調和なシナリオ展開は、凡人には出来ないと思います。
岩井俊二の面目躍如といったところでしょうか。

最初、七海は、自分が結婚式の時に依頼した代理出席のバイトをするのですが・・・
他のバイトと疑似家族を作って、赤の他人の結婚式(この結婚も虚偽に満ちている)に出席するんですよね。
この辺は皮肉な感じですね~
詩情溢れるメルヘンチックな映像世界を作りながらも、冷徹なところがあるのが、岩井俊二のバランス感覚だと思います。
この「疑似家族」の構成員、元のリアル家族と違って、後の方でも出てきます。

リアルな家族の方がよそよそしくて、疑似家族の方が温かみがある。
非常に逆説的です。

この逆説は、監督は違いますが『ディアドクター』で鮮明に描かれていました。

偽医者の話ですが、偽物が本物よりも本物らしい振る舞いをする場合、偽物は本当に偽物で片づけられるのか?という、メッセージが込められていたと思います。

話を戻します。
この作品の主題を勝手に解釈すると、

(リアルな)結婚に挫折した女性が、虚偽の中の世界で真実を見出し、自分の居場所を見つける物語

ではないかと思います。

それはとりもなおさず、虚構と現実の堺が曖昧な世界に生きる、現代人の課題でもあると思います。
主人公は四六時中受身でいるように見え、その意味では現代の女性像からすると古臭くも見える。
のですが・・・ヘビーな体験しても、めげずに立ち直って、前向きに生きていくんですよね。

ストーリに戻ります。
後半に主人公は豪邸のメイドという高収入のバイトを斡旋されるのですが、代理出席のバイトで一緒になった里中真白(Cocco)と再会し、一緒に住むことになる。
この人のSNSのハンドルネームが、表題にもある「リップヴァンウィンクル」です。
綾野剛の安室同様、準主役的な位置づけです。
前半の結婚では「リップヴァンウィンクル」という言葉は全然出てこないので、観客は「???」という状況が続いて、徐々にタイトルの意味が示唆されていく。
この辺もうまいです。

ちなみに、作品の中では、「リップヴァンウィンクル」の意味については説明されていません。

「リップヴァンウィンクル」とは、アメリカの小説家ワシントン・アーヴィングの短編小説、および主人公の名前です。

アメリカ版浦島太郎みたいな話で、「時代遅れの人」、「眠ってばかりいる人」というのを意味するらしいです。
意味の説明もないので、真白がこれをハンドルネームにした理由も良くわからないんですが、真白は何気に教養がある女性だってことは示唆されます。
あと、彼女の末路を考えると、岩井監督の「真白を再度目覚めさせてあげたい」という裏の思いが込められてるのかな?と勝手に推測したりもしますが。

長くなったので、これ以上のネタバレはしませんが、ハッピーエンドのような、そうでないようなラストシーンも、余韻を残してじんわりと来ます。

非常に良くできた作品だと思いますが・・・
随所に「あれっ、なんでこんな演出するの?」「このセリフはどういう意味があるの?」みたいなシーンが結構あるんですよね。
わざとそうしているはずですが、その意図が読めなくて不思議な感じがします。
過去の岩井俊二作品(全部観てるわけではないけど)を観ても、あまりこういう演出はない気がします。

あと、いつも思うんですが、岩井俊二ってかなりのむっつりスケベですよねえ。
本作でも、主人公にウェディングドレス着せたり、メイド服着せたりしてます。
でも、そのむっつりスケベが芸術の領域まで昇華されているから凄いのです。

いずれにしても、本作はヒットして欲しいし、岩井監督にはこれからも優れた長編作品を撮ってもらいたいと願う次第です。

繰り返しになりますが、原作(↓)も良いみたいです!


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください