多少毛色を変えて、映画(DVD)のレビューです。
先週末にDVDで『帰郷』を観ました。
1978年のアメリカ映画で、ベトナム戦争をテーマにした映画です。
夫が戦争に行っている間、ジェーンフォンダ演じるサリーは、看護婦として負傷兵を介護する仕事に就くが、その中に高校時代の同級生のルークがいた。
次第にルークに惹かれ、愛し合うようになると同時に、ルークの影響を受けて反戦に傾いていく・・・
夫が帰還し、浮気がばれて・・・
みたいなストーリです。
ベトナム戦争という大きな社会を描きつつ、それによって家族関係が崩壊していく過程が並走していて、重層的な作品になっています。
近作の『アメリカンスナイパー』は本作の影響をかなり受けているんじゃないかと思わされます。
冒頭のローリングストーンズの「アウトオブタイム」がBGMに流れる中、男が走るシーンを観て、20年以上前に観ていた記憶が蘇ってきました。
ただ、他のシーンの記憶がないんですよね・・・
当時はベトナム戦争の知識もなかったので、理解できていなかったんだと思います。
ラストシーンの意味は、色々と解釈できると思いますが、あからさまに描かれていないため、なかなかに含蓄が深いと思います。
さて、この映画は『ディアハンター』と同じ年に公開されています。
1978年というのはアメリカ映画にとって象徴的な年だと思います。
ベトナム戦争が終結したのが、1975年ですが、映画におけるベトナム戦争へのあからさまな批判は、この2作品によって、すなわち1978年に始まったと言えると思います。
ベトナム戦争とアメリカンニューシネマは並走してきました。
1965年にアメリカンニューシネマ第1作目と言われる『俺たちに明日はない』が公開されっましたが、この年はアメリカが北爆を開始した年です。
1975年まで飛ぶと、アメリカンニューシネマ最終期の『カッコーの巣の上で』が公開。
1976年には『タクシードライバー』が公開。
この『タクシードライバー』主人公は、ベトナム戦争の帰還兵で、精神を病んでいるんですよね。
でも、ベトナム戦争をあからさまには描かない。
ようやく、ベトナム戦争を直接映画として描かれるようになったのが、『帰郷』と『ディアハンター』です。
ベトナム戦争が終結し、若者の反戦運動が沈静化して、アメリカンニューシネマは終焉を遂げた。
一方で、映画の世界でベトナム戦争を直接的に描けるようになった。
ちなみに、この2作品の翌年の1979年に『地獄の黙示録』が公開されています。
1960年~1970年代のアメリカ映画は、当時の世相を色濃く反映しているんだなーと時系列的に並べてみると、良く理解できました。